イ.ツ.モ.ア.ナ.タ.ノ.モ.リ.ハ.ト.オ.イ
流した涙を思い出してた。掌に乗るくらいのほんの僅かな思い出。
あの夜、生意気なあいつが 耳を澄ませとばかり 人差し指を上に向けると 静まり返った店に 微かにサウダージが流れてた。歌ってとせがんで もう三十分あいつの時間を独占した。
皮肉にも あの娘から教わった サウダージ・・・・ まるで人魚姫の悲劇だ。あたしにとっても・・・
あたしは、あの娘から 聞かされたくなかった。あいつの口癖を真似るあの娘に あいつがどうしているのかなんて 聞きたくもなかった。逃げたかった。だから あいつに伝えて・・・とあの娘に短いメールを書いた。それでいっさい耳も目も塞ぎたかった。なのにあの娘からメールが返ってきた。
まるで サウダージみたいですね。
あたしの悲劇をあいつは、歌った。あの娘とのこんな「やりとり」を知ってか知らぬか、そっと盗み見たあの横顔が 何年経っても色褪せない。
イツモアナタノモリハトオイ きっと涙は 音もなく 流れるけれど 赤裸々に 頬ぬらし 心まで溶かしはじめる。 壊れるくらい 抱きしめて 欲しかったけど 思い出に 笑われて 足跡も傷跡隠す。 ua情熱